これ、多分「ただの仕事アプリ」じゃない
アフリカの仕事って、外から見てると「まだこれからの市場」みたいに言われがちだけど、実際はもうフル稼働なんだよね。
朝からバスに揺られて移動してる人、路上で髪を編んでる人、家の中で料理を作ってデリバリーしてる人、市場でずっと仕入れと販売を回してる人。動きまくってる。でも、そのほとんどがネット上では「存在しないことになってる」。
履歴書もないし、LinkedIn もないし、ポートフォリオもない。けど、腕はある。そんな感じの人たち。
で、「Jobbed」っていうアプリがやろうとしてるのは、多分そこをひっくり返すこと。エリート向けのリモート IT 職だけ拾うんじゃなくて、市場の職人も、近所の便利屋さんも、イベントのメイクさんも、みんなまとめて「ちゃんと見える仕事」にしていく。
機能の数だけ見たら「盛りすぎじゃない?」ってくらいあるんだけど、その一つ一つが、非正規・インフォーマルな仕事を「ちゃんとした経済の中」に持ってくるためのパーツになってる感じ。
いきなりだけど「仕事が NFT になる」って何
これ、個人的に一番「え、そこ行く?」って思ったところで。
Jobbed では、終わった仕事が一件ごとに「Work NFT」っていう形で残るらしい。ブロックチェーン上の証拠、みたいなやつ。
普通だったら、仕事の証拠って「前の職場の推薦状」とか「会社の名刺」とかになるじゃん。でもアフリカだと、そもそもフォーマルな雇用契約がない人が多い。なんかで読んだ記憶だと、正式なスキルやキャリアの証明を持ってない人が 7 割超えてるくらい。
だからこの Work NFT が、その代わりになる。
- 「この人はこの仕事を、この金額で、この相手に対して、ちゃんと完了させた」っていう履歴が一件ずつ残る
- それが CV 代わりになるから、「紙の履歴書ください」が要らなくなる
- 他のプラットフォームに「これが自分の実績です」って持っていける
ここから先の話が、けっこう大きくて。こういう履歴がたまると、金融サービスに繋げられるようになる。
- ローンを組むときの信用情報
- 仕事ベースの保険商品
- 「この人はちゃんと働いてきた」というクレジットスコア的なもの
紙も会社名もいらなくて、「やった仕事」そのものが資産になる。これが、Jobbed が言ってる「Work NFT」のコアっぽい。
一人じゃなくて「チームごと」雇うって発想
イベントの準備って想像すると分かりやすくて。
例えば結婚式。メイクさん、ヘア、スタイリスト、フォトグラファー、ビデオグラファー…バラバラに探して、バラバラに連絡して、当日「え、そっちと話合ってないの?」みたいなカオスになること、絶対ある。
Jobbed はここで「Job Pod」っていう概念を入れてくる。
- すでに一緒に仕事したことがあるメンバーで構成された小さなチーム
- 「この 4 人は、イベント撮影系で何回も一緒にやってる」とか
- クライアントは「チーム」として一括で依頼できる
そうすると、
- チームでの動きが早いし、クオリティも安定する
- 仲間内で稼げる額も増える
- メイク+スタイリング+撮影みたいな複数スキルをセットで売れる
ポッドにはポッド専用のページがあって、評価もつくし、そこでも Work NFT が共有の実績として積み上がる。会社に所属してないけど、「機能としてはほぼチーム/事務所」みたいな状態になる。
AI コーチと「ポケット塾」みたいなアカデミー
スキルアップの話もちゃんと組み込んであって。
Jobbed の中には AI ベースのキャリアコーチがいて、
- 「このスキルも足すと、もっと仕事の幅広がるよ」みたいなスキル提案
- 「このエリアだと、この仕事はだいたいこれくらいの相場だよ」っていう価格設定のヒント
- 終わった仕事に対して、「ここ良かった」「ここ直した方がいい」みたいなフィードバック
- 「今の実績だと、こういう方向にキャリア伸ばせる」っていうレベル設計の助言
それに加えて「Jobbed Academy」っていう、スマホ前提のミニ講座もある。
- 短時間で読める/見られるコンテンツ
- ピジン英語とか、ハウサ語、ヨルバ語、イボ語みたいな現地の言語対応
- 終わると小さな認定バッジがもらえて、アプリ内での見つかりやすさが上がる
どこかの調査で、パーソナライズされたスキルアップをした人は、半年で収入が 3〜4 割くらい伸びるケースがあるっていうデータが出てたはずで。Jobbed はそれを「アプリの中で完結させる」方向に寄せてる感じがする。
仕事のほうから近づいてくるマッチングの仕組み
マッチング部分も、けっこう攻めてる。
クライアントが仕事を投稿すると、
- その内容に合うスキルを持ってる人
- しかも「近くにいる」人
だけに、数秒で通知が飛ぶ。
通知を受け取ったワーカーは、その場で仕事に対して入札できる。チャットアプリのグループにメッセージが流れてくるみたいなスピード感で、
- 「この金額で受けます」
- 「この時間なら行ける」
ってリアルタイムで反応が集まる。
これで何が変わるかというと、
- 仕事が 10 分以内に埋まるようなスピード感が出せる
- クライアントは「静的なプロフィール一覧」じゃなくて「今この瞬間に返事できる人」の中から選べる
- ワーカー側は、自分で価格を決めて出せるから、一方的に買い叩かれにくくなる
ネットなくても「近くの仕事/人」を見つけるって発想が面白い
ここからが、個人的には一番おもしろいところで。
アフリカって、スマホはあるけどデータ通信が不安定とか高い、みたいな話をよく聞く。ナイジェリアだけでも、スマホユーザーは何千万っているのに、安定してモバイルデータが使える人はそこまで多くない。でも Bluetooth や WiFi の機能自体は、だいたいのスマホに普通に入ってる。
Jobbed は、その「Bluetooth と WiFi だけは動く」っていう現実に寄せてきてる。
- アプリが周りの Jobbed ユーザーを Bluetooth / WiFi の近接検出でスキャンする
- クライアント側は「近くにどんな職種の人がいるか」をネットなしで見られる
- ワーカー側は「そこにいるだけ」で見つけてもらえる
イメージとしては、市場とかバス停とか、サロンとか修理工場みたいなところで、
- アプリを開く
- 「半径○メートルに Jobbed ユーザーが 5 人います」みたいな表示
- その中に「認定プラマー」が 1 人いて、すぐ呼べる
WiFi の近接っていっても、別に同じネットワークに繋がってる必要はなくて、スマホが「ここに WiFi の電波出してるやついるな」って検知するだけでもいい。だから、GPS やモバイルデータが弱くても、「場所感のあるマッチング」ができる。
物理的に近くにいるって、アフリカの多くの地域ではまだまだ強い武器で、その感覚をテック側に持ってきてる感じ。
仕事の進み具合をちゃんと「途中経過ごとに見せる」設計
Jobbed の中では、仕事って「やる or やらない」みたいな二択で終わらない。
ステータスが何段階かに分かれてて、
- Started(開始)
- Halfway(半分くらい)
- Almost done(ほぼ完了)
- Completed(完了)
みたいな流れで進んでいく。
これをやると、
- クライアントが「今どこまで進んでるか」をアプリで追える
- 途中で支払いマイルストーンを設定できるから、「全額前払いして連絡つかなくなった」みたいなトラブルを減らせる
- 揉めたときに、「どこまでは終わってたのか」をトレースしやすくなる
「この金額、安すぎない?」をアプリ側で止める仕組み
もう一つ、大事そうなのが「フェアウェージエンジン」みたいな考え方。
Jobbed は、ローカルとグローバルの賃金水準を参照しながら、「この仕事、このエリアで、この金額はさすがに安すぎる」っていうラインを決める。
- ワーカーは、そのラインより下で受けさせられない
- クライアントも「極端な買い叩き」ができなくなる
さらに、ワーカー側には「自分のレートがどう伸びてるか」を見せるトラッカーがある。
- 去年より平均単価がどれくらい上がったか
- どのスキルが一番稼ぎに繋がってるか
賃金の透明性って、欧米だと最近ようやく議論が進んできた感じだけど、アフリカの現場レベルでそれをアプリに埋め込んでるのは、結構攻めてる印象がある。
タイムライン、チャット、カレンダー…「仕事まわり全部入り」の感じ
Jobbed は、単なるマッチングで止まってなくて、日常の仕事運用までけっこう細かく触ってる。
- コミュニティフィード みんなが仕事の成功例をシェアしたり、感想を書いたり、質問したり、自分のサービスを宣伝したりする場所。SNS 的なノリで、「この人、最近めっちゃ仕事取ってるな」とかが見える。
- アナリティクスライブラリ ワーカー側なら「どのスキルが一番利益率高いか」「時間あたりの稼ぎがいい仕事はどれか」「どの季節にどの仕事が増えるか」。クライアント側なら「どのワーカーが一番信頼できるか」みたいなのをダッシュボードで見られる。
- 仕事ごとの専用チャット 各案件にチャットルームが 1 つついてて、そこで条件確認したり、写真を送って進捗見せたり、期待値のすり合わせをしたりできる。ポッドや長期案件用のグループチャットもあり。
- アプリ内カレンダー+カンバン 複数の仕事を同時進行で抱える人向けに、「今週はこの仕事がこの日に入ってて、これくらいの収入になる」っていう見通しを立てられる。
フリーランスとか職人って、仕事そのものは上手いのに、スケジュール管理とか顧客管理で損してることも多いから、そこを「アプリが肩代わりする」イメージに近い。
評価・トラブル対応・日常の小さな仕事まで
信頼の部分は、かなりガチガチに固めてある。
- 全ユーザーにレーティングがつく
- 全トランザクションが記録される
- レビューは双方向(ワーカーがクライアントを評価するのも含めて)
- 揉めたときは Jobbed のサポートが入って仲裁する
その一方で、「Jobbed はプロのためだけ」みたいな閉じた世界にはしてなくて、
- テレビのセットアップ
- 買い物代行
- 掃除や片付け
- 重い荷物を階段で運ぶ手伝い
みたいな日常のマイクロギグもちゃんと拾う。仕事のスケールは小さいけど、生活の中ではインパクトが大きい部分。
言語の壁をちゃんと最初から「前提」として扱ってる
アフリカ全体を見たとき、英語やフランス語だけで押し通すのは、どう考えても限界がある。
Jobbed は、
- ナイジェリアのピジン
- ヨルバ語
- イボ語
- ハウサ語
- フランス語(フランコフォン諸国向け)
みたいな言語をアプリ体験に組み込もうとしている。言語を「後から足すオプション」じゃなくて、「最初からそこにあるもの」として扱ってる感じ。
あと、通知もただの「お知らせ」じゃなくて、
- 安全に関する注意
- お金を守るコツ
- 価格設定のヒント
- モチベーションを保つための小さなメッセージ
みたいな「日々のブースト」的なものを混ぜていくイメージが書かれてた。
登録も、「履歴書持ってこい」じゃなくて「とりあえず始めよう」
サインアップの部分は、かなり軽く作ろうとしてるっぽい。
- 長い自己紹介文とか、PDF の履歴書アップロードとかは不要
- 「自分は何ができるか」だけリストしてスタート
- あとは、実際にやった仕事と Work NFT が、その人のプロフィールになっていく
仕事のジャンルも、
- テック系
- 職人・トレード系
- 家事・雑用
- ビジネスサポート
- ロジスティクス
- イベント関連
みたいに、かなり幅広く想定されてる。「小さすぎる仕事はないし、大きすぎるクライアントもいない」っていうスタンスに近い。
正直なところ、自分が一番おもしろいと思ったのは…
ここまでいろいろ並べたけど、個人的に「これはガチで発想として強いな」と感じたのは三つで。
- 仕事そのものを NFT にして、「キャリアの証拠」を個人側に持たせること
- Bluetooth / WiFi で「オフラインでも仕事を見つけられる」ようにしてること
- 賃金の最低ラインと、レートの成長を可視化する仕組み
どれも、「アフリカの現場ってこういう感じだよね」という前提から逆算して設計されてる感じがして、既存の欧米向けギグワークアプリをそのまま持ってくるのとは全然違う匂いがする。
仕事のあり方自体が、ここ数年で世界中でかなり揺れてるけど、アフリカはそもそも「インフォーマルな働き方」がベースにあるぶん、こういうプロダクトが刺さると一気に景色が変わりそう。
大げさじゃなく、「仕事を持っているけど、証明するものがない人」にとって、Jobbed みたいな仕組みは、そのまま人生の選択肢の数に直結すると思う。
じゃあ、あなたがこのアプリを使うとしたら
もし自分がアフリカの都市に住んでて、何かしらスキルを持ってるとしたら、
- まずは「どのスキルを NFT 化したいか」考えると思う
- 次に「誰と一緒に Job Pod 組むか」頭の中でメンバーリスト作り始めると思う
- 最後に「このレートで本当にいいのか」を、フェアウェージエンジンとにらめっこすると思う
逆に、もしあなたが仕事を頼む側だったら、
- 今まで「知り合いづて」や「運」に頼ってたところを、
- 実績と評価と距離ベースで、もうちょっとロジカルに探せるようになる
どっちの立場でも、ちょっと世界の見え方が変わるタイプのアプリだと思う。
あなたなら、最初にどんな仕事を NFT にしてみたい? それ、紙の履歴書じゃなくて、「やった」という事実だけで証明できたら、結構気持ちよくない?
