最近考えてたんだけど、イスタンブールのグランドバザールでの体験と、スマホのアプリ整理してる時の気分って、なんか…すごく似てる。
トルコ人のもてなし、ホスピタリティってやつ。あれが、僕らがアプリとの「腐れ縁」を断ち切れない理由を、全部説明してくれる気がするんだ。
【結論から言うと】僕らは「おもてなし」に弱い
要するに、絨毯屋もアプリ開発者も、やってることは同じ。僕らを「特別な客」だと感じさせて、心地よくさせて、財布の紐を緩めさせる。それだけ。
無料のお茶、心地いい会話、限定のオファー。これ、全部アプリのオンボーディングや無料トライアルで体験してること。僕らはその「おもてなし」の心地よさに、まんまとハマってるだけなんだよね。
イスタンブールで人生観が変わった日
想像してみて。時差ボケでぼーっとしながら、イスタンブールの空港に降り立つ。手にはスマホ。頼りになるのは、たくさんの旅行アプリだけ。
でも、タクシー運転手に覚えたてのトルコ語で「Merhaba(こんにちは)」って言った瞬間、全部が変わる。
運転手は満面の笑みで、すごい勢いで話し始める。こっちが困ってるのを察して、片言の英語とジェスチャーで、なぜか娘さんの結婚式の写真を見せてくる。で、「特別なルート」で本当のイスタンブールを見せてくれるって言うんだ。追加料金なしで。
これがトルコのホスピタリティ。すべての出会いが、ずっと会ってなかった親戚との再会みたいに感じる。…そう、最初はね。
翌日、グランドバザールを歩いてると、あるランプに目が留まる。これが運の尽き。
「友よ!素晴らしいセンスだ!」
気づいたら、店主メフメット(仮名)の隣で、どこからか出てきたアップルティーを飲んでる。彼が語る物語は壮大だ。祖父はスルタンのためにランプを作り、父は銅細工の技術を革新した。このランプは、事故で指を3本も失った弟が、それでも芸術のために作り続けた魂の結晶なんだ、と。
…全部、作り話だってわかってる。向こうも、こっちがわかってることをわかってる。でも、もう財布に手を伸ばしてるんだよね。この感じ、すごく覚えがない?
どうやって僕らを沼にハメるのか?
あのランプの交渉、あれが僕らが毎日やってる「アプリのオンボーディング」そのもの。
例えば、Notion。「あなたの人生、整理します」ってミニマルなデザインで囁いてくる。Headspaceは、心地いい声で「1日10分で禅マスターに」って約束してくれる。
彼らは最初から「月額12.99ドル」なんて突きつけない。絶対に。メフメットみたいに、まずはお茶を出す。つまり、無料トライアル。
きれいなウェルカム画面。優しい許可リクエスト。「バックアップのためにメールアドレスを」「位置情報で天気をパーソナライズ」「大事な通知を見逃さないように」。一つ一つは合理的。でも、気づけば店の奥深くまで連れてこられてる。
7画面も進む頃には、もうこのアプリが自分のめちゃくちゃな人生を解決してくれる唯一の希望だって信じ込んでる。うん、僕も何度も経験した。
なぜ僕らはこんなにチョロいのか?
これ、僕らがバカだからじゃない。脳の仕組みをハックされてるだけ。
僕らの祖先は、目の前の相手が「敵か、味方か」を瞬時に判断して生き延びてきた。だから、脳は「味方」を見つけるとドーパミンを出してご褒美をくれる。安心感とか、喜びとか。
トルコ商人は、これを何世紀も前から知ってた。「友よ!」って呼ばれたり、一度会っただけなのに名前を覚えててくれたりすると、僕らの原始的な脳は「仲間だ!安全!信頼できる!」って叫ぶ。
アプリの「〇〇さん、今日も目標達成おめでとう!」っていう個人宛の通知。あれも全く同じ。僕らの脳の古いOSにつけ込んでる。シリコンバレーは、それをデジタル化して、大規模にやってるだけなんだよね。
これ、日本でも同じ。例えば、ポイントアプリとかニュースアプリが開くたびにくれる「ログインボーナス」。あれも小さな「おもてなし」。毎日ちょっとずつドーパミンを出させて、僕らを「常連客」にしていく。アメリカのNIST(米国国立標準技術研究所)がまとめているダークパターンの報告書にも、こういう人を引き留めるための手法が分類されてるけど、結局は「おもてなし」の悪用なんだよな。
【比較】グランドバザール vs App Store
じゃあ、具体的に何が同じで、何が違うのか。ちょっと整理してみる。
| 手法 | グランドバザールでの手口 | アプリストアでの手口 |
|---|---|---|
| 第一印象 | 「Merhaba, my friend!」人懐っこい笑顔と握手。こっちが主役みたいな気分に。 | 美しいウェルカム画面。「あなただけの体験を」みたいなコピー。これも、自分が主役感。 |
| 無料のギフト | あの、アップルティー。断れないやつ。これを飲んでる間に、防御力が下がる。 | 無料トライアル。全機能が使える夢の時間。でも、気づいたらクレカ情報入力してる。 |
| パーソナライズ | 「君のそのカバン、いいね!」「そのセンスなら、これが合うよ」。特別扱いされてる錯覚。 | 「おすすめ」機能やパーソナライズ通知。「あなたへのおすすめ」って言われると、見ちゃう。 |
| 物語(ストーリー) | 「これは、祖父の代から…」ランプに付加価値をつけるための壮大な物語。正直、どうでもいいけど面白い。 | 「私たちは世界を変えるために…」創業者の情熱的なストーリー。アプリの背景を知ると、応援したくなる。 |
| 緊急性・希少性 | 「今日だけこの値段」「君だけに」。…絶対うそだろ、と思いつつも心が揺れる。 | 「24時間限定セール」「残り3ライセンス」。これも同じ。今買わないと損、みたいな気にさせる。 |
じゃあ、どうすればいいのか?
to正直、完全に避けるのは無理。だって、気持ちいいから。でも、いくつか心構えは持てる。
まず、すべての「おもてなし」にはコストがかかってるってことを忘れないこと。メフメットのアップルティー代は、僕が買うランプの値段に含まれてる。アプリの「無料トライアル」のコストは、有料プランの料金で回収される。
だから、大事なのは「これは詐欺だ!」って決めつけるんじゃなくて、ゲームとして楽しむことかもしれない。
メフメットの作り話には、「へぇ、すごいね!」って乗っかってあげる。その上で、冷静に「でも、この値段は高いな」って交渉する。物語を楽しむエンタメ代と、商品の価値を分けて考える感じ。
アプリも同じ。オンボーディングのドーパミンラッシュは、ありがたくいただく。無料トライアルは、元を取る勢いで使い倒す。で、期間が終わる前に、本当にこの機能に月額料金を払う価値があるか、自問する。
日本の消費者庁も「お試しのつもりが定期購入に」っていう注意喚起をよく出してるけど、問題はそこだけじゃない。僕らはその「お試し」期間の心地よさ、つまり「おもてなし」そのものに価値を感じて、つい契約しちゃうんだ。
結局、僕らが本当に欲しいもの
トルコの商人とアプリ開発者、彼らが売ってるのは、絨毯や機能じゃない。僕らが喉から手が出るほど欲しい「理解されている」という感覚なんだ。
僕の好みを一瞬で見抜いて、ぴったりの柄を勧めてくれる絨毯屋。僕が必要としていた機能を、まるで心を見透かしたかのように実装してくるアプリ。
僕らは「所属」を買ってるのかもしれない。コミュニティの一員である感覚を。
だから、まあ、たまにはいいんじゃないかな。知らない人との最高の会話を思い出させてくれるランプに、ちょっと多めにお金を払うのも。年に2回しか使わない瞑想アプリのサブスク代が、「いつか自分も変われるかも」っていう希望の値段だとしたら。
ただ…アップルティーには気をつけて。あれが全ての始まりだから。
あなたのスマホにも、なぜか消せない「お守り」みたいなアプリ、ありませんか?
